英語のリスニングは私たち日本人にとってとてもハードルが高いですよね。
何年間も勉強をしてきて英語はそこそこわかっているはずなのに、なんで英語が聞き取れないんだろう?と思うことはありませんか。
その答えはズバリ、英語の勉強をする前の下準備が十分でなかったからです。
新しく単語やイディオムを暗記するよりも前に、難しい文法が理解できるように勉強するよりも前に、英会話教室でネイティブの先生と会話するよりも前に、字幕スーパーなしで洋画を観まくるよりも前に、英語のリスニング力を上げたい人が何よりも優先して準備すべきことがあるのです。
それは、英語を音として聞き取れる耳を育てること。
当たり前のことのように聞こえますが、この段階を飛ばしてしまっている人は意外と多いのではないでしょうか。
目次
英語リスニングのコツと「段取り八分、仕事二分」…?
「段取り八分、仕事二分」という言葉を聞かれたことはありますか?
「なるべく効率よく最大の成果をあげるには、実際の仕事以上に事前準備をしっかり行うことがとても重要だ」ということの例えです。
仕事でも実践している人は多いのではないでしょうか。
新規案件の商談成約をゴール(成果)とした場合、
当日のプレゼンや交渉(仕事)の前の顧客調査、業界調査、アポ取り、社内根回し、顧客側担当者との打ち合わせなどなど、
事前準備(段取り)がとても重要ですよね。
英語のリスニング力アップという大仕事の成功にも、この「段取り八分、仕事二分」の考えが大いに役立つのです。
英語のリスニング力をあげるためのコツ:
1.英語の音を拾ってくれる耳を育てる。(段取り=八分)
2.耳が拾った音の意味を理解できるように勉強する。(仕事=二分)
こんな当たり前のような2つのコツですが、この2つが別物であるということを理解することがポイントです。
そして、先ほどの「段取り八分、仕事二分」を当てはめてみましょう。
英語ネイティブ者と会話ができる、字幕なしで洋画を楽しむことができるレベルの英語リスニング力を身につける(成果)には、
語彙力、文法、言い回しなどの今までと同じ英語の勉強(仕事)にかかる前に
相当の労力をかけて念入りに英語の音を拾える耳を育てておくという事前準備(段取り)が重要だということです。
それでは英語リスニング力をあげるための2つのコツを、もう少し詳しく見て見ましょう。
英語リスニングのコツ1:音を拾える耳を育てる
<段取り=8割>
とにもかくにも英語の音が耳から入って来ないとリスニングはできません。
英語の音を耳で拾えるというのは、例えば「 Which came first: the chicken or the egg?」という文章が、意味はどうであれ「ウィッチケイムファーストダチキンオアダエッグ」という音に聞こえるという意味です。
英語を拾える耳を育てるための3つのステップ
①英語と日本語の音の違いを理解する
②英語の正確な発音を身につける練習(発声)
③聞こえた英語をそのまま書き出す練習(リスニング)
①日本語と英語の音の基本の違いを理解する
日本語と英語の特徴を知っているのと知らないのとでは、正しい発音にたどり着くまでの時間に差が出てきてしまいます。
細かいところまで追求すればもっとたくさんの違いがありますが、特に最初のうちに克服しておきたい3つのポイントをご紹介します。
<アクセント(音の強弱)>
英語では、アクセントを置く位置を誤っただけで理解してもらえないことがあります。
同様に、おかしなアクセントで覚えてしまうと、覚えたはずの単語なのに聞き取れないことも。
それくらい英語においてのアクセントはクリティカルです。
有名な例にマクドナルド「McDonald's」がありますが、「マクダーノォズ」でダにアクセント。
私たちが大きくはっきりと「まーくーどーなーるーどぉ!」と言ってもわかってもらえないのはこのせいです。
<イントネーション(抑揚)>
私たち日本人が「わたしはカマキリがキライです。」という文を読むのに、イントネーションは必要ありません。(ここでは方言は例外)
かなりフラット(平坦)なままで読んでいます。
でも外国人観光客になりきって読むと、「ワタシワァ、カーマキリガァ、ニガテデェス」みたいになりませんか?
これがいわゆるイントネーションです。
<音素(発音記号)>
カカシとタワシってなんとなく響は似ていますが、私たち日本人にとっては全く異なる単語ですよね。
タヌキとサヌキとか、ガラスとカラスとか、ヒツマブシとヒマツブシとか、、、(笑)
でも日本語の音に慣れていない人なら区別できないこともあるかもです。
実は英語にも日本語にない音があるため、似たような現象が起きています。
例えばハット。
帽子のハット(hat)もピザハットのハット(hut)も、どちらもカタカナで表記するとハット。
ところがhatの発音記号は「hæt」でhutの発音記号は「hʌt」なのです。
ここではそれぞれの発音記号による音の違いの説明は省きますが、
お伝えしたいのは、日本語ではハットでも、
英語だとhatとhutは違う音で発音される全く異なる2つの単語だということ。
他にも日本人に馴染みのあるカタカナ語でいくつかご紹介します。
RとL | UとA | その他 |
グラス:grass - glass | ハーリー:hurry - Harry | シー:see - she - sea |
ライス:rice - lice | アップ: up- app | イヤー:ear - year |
フライ:fry - fly | アント:aunt - ant | ベース:base - vase |
フルート:fruit - flute | マッチ:much - match | フード:food - hood |
青字をクリックするとケンブリッジディクショナリーのウェブサイトにリンクするので本物の発音を参考にしてみてください。
意味はともかく、私たち日本人にとっては聞き取れないほどの小さい発音の違いで全然意味が違ってしまうこともあること知っておきましょう。
音素については「日本語母語話者が訓練するべき英語の音素」もおすすめ。目から鱗な読み物です。
「①日本語と英語の音の基本の違いを理解する」ための特に大事な3つのポイント
- マクドナルドでは通じない(アクセント)
- 「ワタシワァ、カーマキリガァ、ニガテデェス」(イントネーション)
- カカシとタワシは全然違う(発音記号)
②正しい発音を身につける練習(発声)
日本語と英語の発音が違うということが理解できたら、次は発声練習をして正しい発音を身につけましょう。
リスニングの基礎力アップなのに発音の練習が必要って、なんだか違和感ありますよね。
でも自分で正しい発音ができるようになると同じ音が耳から入ってきたときに認識しやすくなるんです。
この練習には耳で聞いた文章を口頭で追いかけるシャドウィングがおすすめ。
ただし、同時通訳者が特訓に使うような本格的な練習は一切不要です。
また、単語の意味を覚える必要もありません。
この段階では自分には簡単過ぎかなと思うレベルの英文、できればシンプルな単語単位で始めるのがベストです。
音声付きの単語本や単語アプリなどがちょうどいいですね。
聴いて、繰り返す。
これだけです。
この段階ではまだ見ません。
耳の音だけを頼りにしてください。
何度か聴いても聞き取れなければ、スクリプトで正解を確認します。
聞き取れた音も正確な音を確認するために、スクリプトを見てみましょう。
今度は目で見ながら正しい発音で自信が出るまで繰り返します。
仕上げに再度スクリプトなしで耳だけで聴いて繰り返します。
このシャドウィングのポイントは、できるだけ完璧にその音を真似すること。
余裕があれば自分の声を録音して確認してみるのもおすすめです。
鏡の前で自分の口の動きや表情を確認しながらもいいですよ。
「th」「v」「l」「r」「f」など、日本語にはない発音の口がちゃんとできていますか?
自分では完璧にコピーできていると思っても、意外と変だったりするんです。
英語がペラペラなネイティブになった気分で、なんならジェスチャーでも交えながら正確に発音してみましょう。
自分であることを忘れて、英語がペラペラの誰かになりきれると上達スピードが一気に加速します。
「②英語の正確な発音を身につける練習(発声)」のポイント
- 音声付き単語帳などを使ってシャドーウィング
- スクリプト必須!
- 発音練習中は意味を気にしない
- 英語がペラペラなネイティブになりきり<我を忘れて>練習する。
- 自分の発音を録音して聞いてみる。
- 鏡の前で口の動きを研究してみる。
③聞こえた英語音を書き出す練習(書出し)
シャドウィングだけでも十分に聞き取りの練習になりますが、ワンランク上のディクテーションというテクニックもおすすめです。
聞き取った音を文字に起こすことで、さらに正確な発音の精度が増します。
また答えも明確で、ゲーム感覚で楽しめる点でもおすすめです。
自信がない場合は上記②で使った音声付単語帳の単語から始めて、徐々に文章などに挑戦してみてください。
この段階でも、まだ細かい意味を気にしてはいけません。
また、エルが何個だったっけ?のようなスペルを細かく気にする必要もありません。
ただし、「aとu」や「lやr」の違いは音そのものが違うので十分に気をつけましょう。
「③聞こえた英語をそのまま書き出す練習(書き出し)」のポイント
- 音声付き単語帳などを使ってディクテーション
- 書き取り練習中は意味を気にしない
- スペルの精度は求めないが、カカシとタワシの違いには気をつける。
英語リスニングのコツ2:理解力を磨く
<仕事=2割>
この段階で理解力をあげる勉強(仕事)に取り掛かります。
語彙やイディオム、言い回しを覚えたり、文法を練習したり、いわゆる英語の勉強で仕上げましょう。
効率的に上げるには英語の多読と多聴(精聴も含む)の二本立ての取り組みをおすすめします。
耳が拾った英語の音を理解できるようにする2つのポイント
①多読で語彙力を強化する
②できるだけ英語のまま理解できるようにする
語彙力アップには多読がおすすめ
英語に限らず、どんな言語でも日常会話に必要な単語は2,000語程度だそうです。
私たち日本人は中学校と高校で約3,000語弱の英単語を学ぶので、単語数だけでいえば高校卒業時には立派に日常会話ができるレベル。
そしてビジネス会話で実際に使われる英単語数は、業界によっても異なるでしょうが、その数倍と言われています。
ビジネスの場で英語を使って頑張るなら、やはり語彙力を磨くことが大切です。
ただ、新しい単語帳を購入する必要はありませんし、単語の暗記に専念することもありません。
何回か同じ単語を調べるうちに必ず覚えます。
慣れてきたらぜひ英英辞書で調べるようにしてみてください。
いちいち頭の中で日本語に変換せずに感覚で理解できるようになります。
今は新聞や雑誌、インターネットでなんでも情報がそろうとても便利な時代ですから、日本のニュースを読むのと同じくらいの時間をかけて英語の記事を読んでみましょう。
せっかくなら日本のニュースを英語で読んでしまってもいいかもしれません。
また一言一句の意味を言える必要はありません。
自分が納得できるレベルで記事の内容が理解できれば十分。
とりあえず読み切ることを毎日の習慣にしてみてください。
最初は1日で1記事読みきるのがやっとだったのが2記事、3記事と増えていけば、それだけ語彙力も強化されているということです。
ポイントは記事を読み切った感を味わうこと。
これを味わえるか味わえないかで、モチベーションが変わってきますよ!
「多読で語彙力アップ」のポイント
- 単語帳の丸暗記はつまらない
- 英字新聞や雑誌で1記事から読み始める
- 完璧な対訳をするための細かい単語調べは不要
- 記事の伝えたいことがわかる単語量で十分
- 短い記事でもいいので読み切る
- 英英辞書に切り替える(和英辞書との併用も可)
英語のまま内容を理解できるようにする
英語の音を拾える耳を作る準備段階では、音を音として聴くことが目標でした。
仕上げの段階では、入ってきた音に意味をつけて内容を理解できるようにします。
集中して聴ける環境を1日に数分だけでも整えて、じっくり聴くことを毎日の習慣にしてみてください。
準備段階で使っていた英語音声付きのテキストや単語本から始めるのもありです。
単語や文章単位なら短くキリもよく意味の確認もしやいので、続けるモチベーションになるでしょう。
ただ、最終目標はできるだけ日本語に変換せずに英語のまま理解できるようにすることにしてください。
ゆくゆくは日本語訳が流れてこない教材にステップアップしましょう。
スピーチや映画、海外ドラマ、好きなアーティストの曲など、あなた自身が楽しめる要素がある教材がおすすめです。
多読の練習と同様に、一言一句の意味を暗記して対訳をするのではなく、話の内容をイメージしましょう。
短く凝縮された映画予告編もおすすめ!
学校では習わない活きた単語や言い回しもたくさんあるので、英語の面白さが増しますよ。
完全スクリプトもあるのでぜひ参考にしてくださいね。
ちなみに映画はジャンルによって使われる単語の種類がガラッと変わります。
恋愛ものやファミリー向けなら日常会話の練習になるので初心者におすすめ。
コメディーは、歴史的背景や文化的背景など英語の知識だけではカバーしきれないことも多いので、意外と難しいです。
歴史映画は、現在では使われない単語や言い回しもたくさんあるので難しく感じてしまうでしょう。
アクション映画は攻撃的な表現も多いので、英語学習という点ではおすすめできません。
また余談ですが、アメリカ人についていえば映画好きな人がとても多いです。
新旧含めて幅広いジャンルの映画からの引用が頻繁に使われるので、
引き出しを増やすという点でも映画をたくさん観ておく事はおすすめします!
「英語のまま理解できるようにする」ポイント
- 数分だけでもじっくり聴くことを毎日の習慣にする
- 簡単なレベルの英語から始める
- 最初は日本語訳つきの教材でも良い
- 慣れてきたら英語の字幕やスクリプトで内容を確認
- わからない単語は英英辞書で調べるようにする
- 英語のニュース、映画、ドラマ、音楽など、興味があるものから選ぶ
- 完璧な対訳はしない
- 映画はジャンルによって使われる単語の種類が全然違うので注意
英語リスニング力をあげるコツのまとめ
高校生でアメリカに留学した私はその時点でそこそこの単語の知識が合ったはずなのに、あろうことかしばらくは筆談とジェスチャーでコミュニケーションをとっていました。
なぜなら、全くと言っていいほど段取りしておくべき「英語の音を耳が拾うこと」ができなかったからです。
英語をペラペラと上手に使いこなす他国からの留学生と自分を比べ「私だけなんて英語ができないんだろう」とドスーンと落ち込む日々。
(「なんでできないんだろう」もありましたが「なんてできないんだろう」が先)
あまりにも周りについていけない自分が恥ずかしくて積極的に教えを乞いに行けなかったことも悔やまれます。
そしていつも影に潜んでいた私は、
- この記事でご紹介した2つのコツが別々であり、
- また努力で耳を作ってからでないと聞きたくても聞き取れない
ということに気がつくまでに数年をかけてしまいました。
あぁもったいない。
英語は日本語とこういうところが違うのか。
こうやって舌や唇を使うことでこういう英語の音が作られるのか。
自分の口で発音ができると、本当に耳からもどんどん入ってくるようになります。
あなたもまだご自分のリスニングに自信がないなら、まずは下準備に戻ってみてください。
慣れ親しんでいる日本語との違いを意識し、じっくり英語が拾える耳を育ててみてください。
一朝一夕にはいかないかもしれませんが、下準備さえ整えばきっと大きな成果が得られるはずです。
今後はそれぞれのコツの対策をもっと具体的にご紹介していきますので、どうぞお楽しみに。